原因不明不妊症とは
原因不明の不妊症とは、不妊検査を受けてもその原因が特定されない状態を指します。不妊症の原因が特定されない(不明)ことは決して珍しいことでなく、頻度としてとても高いものになります。原因不明不妊症もしくは機能性不妊と言われることもあります。医師が「原因不明の不妊症」と判断した場合、通常のタイミング法や一般的な検査だけでなく、より詳細な精密検査や進んだ治療法を検討することがあります。特に、不妊期間が1年以上経過している方や35歳以上の女性においては、精密検査を受けることが推奨されます。
原因不明不妊症で
原因ではないか
と疑われること
不妊症の検査を受けても原因が特定されないのが原因不明不妊症ですが、推測される病態としては下記のようなものが挙げられます。
- 軽度の子宮内膜症
- 軽度の腹腔内癒着
- 卵管のピックアップ障害
- 卵子の質が悪い
- 精子の機能障害
- 受精障害
- 内分泌異常
- 免疫異常
- 着床障害
原因不明不妊症の検査
腹腔鏡検査
腹腔鏡検査は手術によって腹部に小さな切開をして内視鏡を挿入し、子宮、卵管、卵巣を直接観察する検査です。原因不明の不妊の多くは、「ピックアップ障害」と呼ばれる卵管采の周囲への癒着も原因のひとつとされています。ピックアップ障害は、子宮卵管造影検査ではなかなか発見できない障害で、子宮内膜症などの疾患によって引き起こされることがあります。腹腔鏡検査中にピックアップ障害が見つかる場合、直ちに治療に移行できます。ただし、腹腔鏡検査は全身麻酔が必要であり、身体的な負担と検査の効果を考慮し、当院では検査目的のみの腹腔鏡検査は行わない方針です。また、その利益を受けるかたは6人に1人以下とされており、原因検索のための腹腔鏡手術は近年大きく減少しております。
腹腔鏡検査の効果
腹腔鏡検査によって卵管采の癒着などがあれば癒着解除された女性(35歳まで)の約半数が、手術後1年以内に自然妊娠する可能性が報告されています。手術後1年経過しても妊娠が達成されない場合、体外受精が検討されます。
排卵誘発剤も用いた
人工授精
原因不明不妊の場合、一般的に排卵誘発剤単独もしくは人工授精単独での妊娠率の上昇は明らかでないとされております。そのため、年齢を考慮しながらですが、積極的に排卵誘発を併用した人工授精をおすすめすします。
体外受精
体外受精は卵管を介さずに受精を試みる治療法であり、卵管采の癒着があっても行うことができます。また、体外受精を通じて卵子の状態や受精の成功率を詳細に把握できます。妊娠までの過程が腹腔鏡検査に比べて速いため、最終的には腹腔鏡検査の有益性をどの程度考慮すべきか判断が難しいです。特に年齢を重ねると卵子は老化するため、38歳以上の女性には治療の迅速な進行を考えて体外受精を推奨いたします。それより若いかたでも、卵巣予備能の低い方は早期に体外受精を推奨する場合もございます。