アシステッドハッチング
とは
アシステッドハッチング(Assisted Hatching:AHA)は、着床を支援するために、胚が透明帯から孵化(ハッチング)するのを助けるための技術です。透明帯の一部を薄くしたり穴を開けたりすることで、胚の着床を促します。
胚は透明帯と呼ばれる膜に包まれており、通常、4〜5日目に胚の内部に水分が蓄えられ、それが拡張して胚盤胞と呼ばれる段階に成長します。胚盤胞は内腔が大きくなり、透明帯が薄くなることで発展し、最終的に透明帯が柔らかくなり亀裂が生じ、胚盤胞が外部に孵化(ハッチング)し、子宮内膜に着床することができます。
しかし、凍結融解された胚は、新鮮な胚に比べて透明帯が硬くなる傾向があり、ハッチングに時間がかかるもしくはハッチングが起きないことがあります。このため、胚の着床が最適なタイミングとずれる可能性があり、着床率や妊娠率が低下するとされています。
このような理由から、特に凍結融解された胚に対して、レーザー技術を使用して透明帯を薄くしたり(菲薄化)、胚盤胞に穴を開けたり(開口)することで、ハッチングと着床をスムーズに進行させる手助けを行うのがアシステッドハッチングの目的です。
アシステッドハッチング
をお勧めする方
- 年齢が高い方
- 透明帯が通常よりも厚い場合
- 透明帯が硬い場合
- 何度か良質な胚を移植しても妊娠しない場合
アシステッドハッチング
の種類
当院のアシステッドハッチングおいてレーザー法を採用しております。赤外線レーザーを用いて、胚移植前に透明帯へレーザーを照射することで、透明帯の一部を薄くするか開口させることができます。このプロセスは胚そのものには損傷を与えず、使用するレーザーはDNAの損傷リスクを最小限に抑えた医療用レーザーを使用しています。安全性が高い方法ですのでご安心ください。
機械法
1990年にCohen氏によって初めて提案されたアシステッドハッチング(AHA)の方法の一つです。この方法では、「PZDピペット」と呼ばれる針状のピペットを透明帯と胚盤胞の間に挿入し、ホールディングピペットと透明帯を摩擦させることでT字の切開を行います。この技術は難易度が高く、培養者に高度な技術が求められます。現在はもっぱらレーザー法が主流です。
化学的方法
特殊な薬剤である酸性タイロード液などを使用して透明帯の外側を溶解する方法です。この方法では透明帯を薄くすることが可能ですが、薬液が胚に影響を及ぼす懸念があり、現在はあまり実施されていません。
レーザー法
現在のAHAの主要な方法の一つであり、安全かつ簡便に行うことができるため、広く採用されています。赤外線レーザーを透明帯に照射し、受精卵を覆う透明帯を薄くする(透明帯菲薄化法)か、穴を開ける(透明帯開口法)ことができます。レーザーは透明帯にのみ照射されるため、胚そのものへの影響を最小限に抑えることができます。
透明帯開孔法(ZD法)
透明帯開孔法(ZD法)は、孵化を促進させるために透明帯に穴を開ける方法です。ただし、開孔部が小さすぎると、ハッチング時に内部細胞塊(ICM)が分断され、一卵性双胎のリスクが高まる可能性があります。レーザーの照射を最小限に抑えつつ、できるだけ大きな開口部を作ることが重要です。
透明帯菲薄化法(ZT法)
透明帯菲薄化法(ZT法)は、透明帯の一部を薄くする方法です。
アシステッドハッチング
のリスク
細胞に対するレーザーの熱影響
当院では、細胞にできるだけダメージを与えないよう、レーザーを透明帯に対して照射しています。
多胎発生のリスク
原因が明らかにされていませんが、透明帯から胚が脱出する際に開口部に引っかかることや胚が分裂することがあるとされています。アシステッドハッチングにより、一卵性双胎の出産率がわずかに上昇する可能性が懸念されています。